夜想曲〜ノクターン〜

 

愛を知った人魚の姫は
人の姿と想いを抱いて
闇の海へと消えました

愛しい人の血を浴びて
人魚に戻ることをせず
一人海の藻屑となって
海へと消えていきました

姉の声は哀しく響き
王子は何も知らないまま
夜の闇に満ちるのは
消えゆくことの悲しみか
出逢えたことの喜びか

人魚の姫が消えた後
姉は静かに歌います
月と、星と、海もまた
人魚の姫へと歌います

何も知らない王子は一人
理由も分からず海を見て
一粒涙を落します